<アグネス論争の知識>
2007/10/13 日記<アグネス論争>
アグネス論争
アグネス論争とは、1987年に歌手・タレントのアグネス・チャンが子どもを連れてテレビ局に出勤し、番組に出演したことをめぐり、子連れ出勤の是非について巻き起こった論争。1988年の新語・流行語大賞では、「アグネス論争」が流行語部門・大衆賞を受賞するほどの社会論争となり、日本の働く母親、女性の立場を再考させるきっかけとなった。
経緯
このアグネス論争の背景には、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法の施行など、その当時女性の社会進出機運がマスコミで話題になっていたことがあげられる。当時、アグネスは12本のレギュラー番組を抱えており、テレビ局から「早く復帰してくれ。子供を連れてきていいから」などと説得を受け、不安に思いつつ職場に復帰したというのが真相だという。テレビや雑誌は、アグネスの子連れ出勤を批判的にとりあげ、隠し撮りまでされた。これらの一連の日本の報道がアメリカの雑誌『TIME』に取り上げられ、その記事を読んだスタンフォード大学のマイラ・ストロバー教授の招きにより師事し、女性と教育のかかわりについて学ぶことになった。これらを契機として、アグネスは自身の問題を社会的問題ととらえ、スタンフォード大学の博士課程にすすみ、日本とアメリカ合衆国|アメリカの男女間格差を比較・考察した卒業博士論文『この道は丘へと続く』(共同通信社、2003年9月3日刊。原著はMITプレス、1999年6月25日刊)の出版に至るが、「職場における男女間の格差や、仕事と子育ての両立に対する自分の意見を理論的に語ることができず、感情論でしか自分の状況を説明できなかった」と当時を回顧している(アグネス・チャン公式ホームページ「アグネス博士論文『この道は丘へと続く』発売イベント報告」より引用)。ちなみに、アジア・ラテンアメリカを含む国際的水準からみれば、当時も現在も中産階級の女性が子どもを職場に連れて行き、職場の同僚がそれをサポートするのは常識である(上流階級の場合は子どもの世話はメイドなどの役割)。現に、アグネス論争当時、連れていった子どものサポートを共演者やスタッフが行なったが、これは出産直後から強引にレギュラー番組に復帰させようとしたテレビ局の責任からみても当然のことであった。また、これに少し類似した論争が1910年代を中心にさかんに展開されていた。それは、青鞜社のメンバーが中心となって繰り広げられた、いわゆる「母性保護論争」である。さしずめアグネス役は平塚らいてうで、アグネスを叩いた林真理子役は与謝野晶子ととらえて、その共通項をみることができる。もちろん当時とは時代の違い、社会・経済状況(晶子もらいてうも女中を雇える身分)の違いもあり、それにともない、論争の位相や具体的な論争の内容は違ってくるとはいえ、本質的に通底している問題であるといえる。これは斎藤美奈子の著書『モダンガール論』やフェミニズムの言説で、さかんにその相似性が指摘された。働く女性にとっては、子育てと仕事の両立は、それほどの進歩はなかった、ということもできる。斎藤美奈子は著書『文壇アイドル論』の中で、上野千鶴子と林真理子の違いを、「男性に受け入れられたか・られなかったか」という。アグネス論争から16年後、大手の企業の中にはオフィス近くに保育所をつくるところも出てきている。しかし、この不況下、中小企業にはそのような余力があるところは多くない。また派遣労働の場合は論じるまでもなく無理である。その結果として少子化にますます拍車がかかることとなった。
論争とその内容
*アグネス批判派: 中野翠、林真理子引用
: 「私は、子どもを妊娠して産休をとっていました。: 子どもが生まれると早く復帰して来いと言われましたが、私は、自分で子どもを育てたかったのでもう少し待って欲しいと言ったのですが、どうしても戻ってきて欲しいと言われました。
: それで、『子どもを連れって行ってもいいですか?』と聞くと『猫でもなんでも連れて来い』と言ってくれたので、私は、子どもを連れて出勤したんです」
::『第1358回「アグネス論争から15年」』[http://www.sut-tv.com/terakoya/kougi/no1358/kougi.htm]テレビ静岡 2003年11月22日放送より引用: 「日本の教育の海に投げ込むのは、とても心苦しく、大きなためらいがあります」
::アグネス・チャン著『アグネスの命がいっぱい』の章見出しより引用: 「女たちはルールを無視して横紙破りをやるほかに、自分の言い分を通すことができなかった」
::上野千鶴子著『働く女が失ってきたもの』より引用
関連項目
関連文献
*アグネス・チャン著『愛、抱きしめて アグネスの結婚・子育て奮戦記』現代書林、1989年5月、ISBN 4876202818原著: Myra H. Strober, Agnes Miling Kaneko Chan, ''The Road Winds Uphill All the Way: Gender, Work, and Family in the United States and Japan'', Cambridge, MIT Press, June 1999, ISBN 0262194155; MIT Press, April 2001, ISBN 0262692635
附・論争経過表
グループ「母性」解読講座編『「母性」を解読する つくられた神話を超えて』(『ゆうひかく選書』)、有斐閣、1991年6月、ISBN 4641181667
呉智英著『サルの正義』双葉社、1993年3月、ISBN 4575282154、所収
呉智英著『サルの正義』(『双葉文庫』)双葉社、1996年7月、ISBN 4575710768、所収
林真理子著『余計なこと、大事なこと』文藝春秋、1989年4月、ISBN 4163431705 所収
林真理子著『余計なこと、大事なこと』(『文春文庫』)文藝春秋、1991年9月、ISBN 4167476096 所収
若桑みどり著『レット・イット・ビー』角川書店主婦の友社、1988年11月、ISBN 4079291159 所収
外部リンク
*http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/agunesu.HTMアグネス論争を読む
アグネス論争、再び
バンコク生活エッセー ヒトミのバンコクな毎日(スペースアルク、『「アグネス論争」もびっくり』と題するタイの子連れ出勤事情)
Mainichi INTERACTIVE くらし・娯楽 Women: 女性史に描かれた20世紀『母性 手にした「子を産む選択」』 - 母性と避妊、母性保護論争とアグネス論争を並べて述べたエッセイ。これでは説明不足ではあるが通底する問題だという認識は見られる。 Written by 大和田香織)
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◆アグネス論争についてピックアップ :上野千鶴子著『働く女が失ってきたもの』より引用関連項目 フェミニズム関連文献*アグネス・チャン著『愛、抱きしめて アグネスの結婚・子育て奮戦記』現代書林、1989年5月、ISBN 4876202818 アグネス・チャン著『アグネスの命がいっぱい』(『P-and books』)、小学館、1989年1月、ISBN 4093470111 アグネス・チャン、マイラ... |